秋の七草

秋の気配がひとしお感じられるころ、朝夕、心地よい風が吹くようになりました。

高円の 野辺の秋萩 いたづらに

咲きか散るらむ 見る人なしに

笠金村歌集(巻二―二三一)

草花や木々を題材にした万葉集の中で、ハギは百四十二首あり、ウメの百十九首を抑えトップ。地面に届きそうな長い枝が秋風に揺れ、何となく健気(けなげ)に見える姿・形が、万葉人の心を引いたのでしょうか・・・。

こぼれ落ちそうに咲く赤紫や白い花も可憐です。

 「高円の・・・」は見る人もないまま、むなしく咲くハギに亡き皇子をしのぶ。主は志貴皇子(天智天皇第七皇子)高円(たかまど)山の麓に宮を構えていたと考えられています。歌の先入観からでしょうか、美しと同居するように散り急ぐ光景が頭をよぎります。

 秋を代表する花の一つ、と古くから愛されてきただけに、大和路にもハギの名所が多く、いずれも風情があります。